Shogi 研究ノート(77桂型角換わり)

1級〜2段あたりの棋力をウロウロしているやつの将棋研究ノート

後手番・後手35歩戦法 / 新無敵囲い(概覧)


【概要】

後手番対居飛車。新無敵囲いというけど囲いではなく戦法名で、シンプルに言うと35歩からの陽動居飛車である。
後手番の強みである戦型保留を最大限に活かして、級位者を思わせる早石田風味の駒組から速攻に来るかと思わせて、そのままフラフラと駒組していく。


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無敵囲いで検索したら出てきた。





⚫序盤の狙い

角道を閉じるハチワンシステムと考え方や筋が似ているが、こちらは角道を開けているので、☖らしいカウンターと戦型保留、餌の35歩による局面誘導のしやすさなど、すべてのバランスが割と良い。

ちなみに先手では32銀型のメイドシステムのような相居飛車を採用しているのだが、後手番でやらない理由は、角道を開けた方が戦型誘導がしやすいことと、相手に☖の意図を先に見せてしまうと戦型保留がしづらいためである。単純に棒銀でも受けの展開になる上に、手が広い。

手が遅い後手番の唯一の強みは、☗が方針を先に示して出くれることだと考えている。どうぶつしょうぎが後手必勝なのは、先手が先に方針を出してしまうからである。☖としては後出しジャンケンがしたい。



細かい分岐は書かないが、この戦法は居飛車かと思いきや振り飛車、かと思いきや居飛車、かと思いきや振り飛車という形になっていく。

☗が仕掛けを恐れて角を取らなくても、角道を閉じても、角を積極的に打ってきても、こちらが研究に持ち込める。カウンター戦法なので、相手の戦型によって正確な指し手を知らないと全く良くならないし、☗に対して互角以上の形勢を作るのが目的で、一瞬で崩壊させるような筋があるわけではない。とはいっても、変な手を指すと☗はすぐに悪くなるし、早指しならば後手で先手を迷わせられるくらいでも本望だ。そもそも、悪い評価値以上に互角の展開になる。


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ここが基本図として、次の手は凡そ角打ちを防ぐ☖62銀となる。これが新無敵囲いだ。相居飛車ならそこそこよく見る形ではある。
この形から、☖は相手の自然な駒組を咎めていく。☗が銀を上がる急戦調の手には手順の前後ですぐ悪くなるので気をつけたい。また、単にすぐ無敵囲い風の形を作ると、☗36歩から普通の展開にされやすい。先に35歩を付けば、角換わりの変化で先に36歩を突く狂人以外には研究形になる。

先に☗36歩と突かれたら、飛車先不突きを活かして袖飛車に。この戦法では袖飛車の変化になることが多いので、後手番の方は研究が活きてくる。普通の相手は受け方を知らない。



⚫56歩と突かれた場合

すぐ☗56歩から歩を取りに来る以下の形だけは、普通に早石田にしたほうがよさそうである。


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この手順の後手番早石田のポイントは、32飛戦法と違って戦型が固定されていることと、43戦法のような手損がないことである。

なんか怖そうだから穴熊や、と言わんばかりに穴熊にされると、ソフト的には☗はかなり怪しくなる。一直線穴熊的な展開はこちらが形を作れるだけなのである。

☗38金や☗27金という手も考えられるが、☗は囲いや攻めが伸びなくなるし、形が限定されていることで、一方的に形の研究が出来る☖が良くなりやすいと思う。しかも、そこから☗が穴熊に組むと評価値は既に-100くらいになる。穴熊の評価低すぎワロタ。



棒銀にされた場合


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ここからシンプルな振り飛車にすることはあまりなくて、まっすぐな居飛車か袖飛車にする。評価値は悪いと出ているが、暫定評価である。こちらは研究形だし、ある程度進むと良くて +200 くらいに落ち着く。ソフトの最序盤の評価は全く信用ならない。
☗☖36歩同歩となる場合だけは、向飛車や三間飛車の変化がオススメらしい。

次の形は、相手が22歩を打つ変化である。


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この形は途中まで☗+300くらいと出るのだが、先手が最善を尽くしても結局は良くて☗+200くらいに落ち着く。

基本的には☗が舟囲いなどの左玉にしたら、どうやっても後手の袖飛車が間に合ってしまう。こうなってみると、☗は囲いが疎らで、攻めにあと2手、3手とかかりそうなのに、こちらは無敵囲いが手をつけづらく、すぐさま研究の攻め手順に持ち込める。以下は一例である。


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調子よく馬を作っても互角。むしろ、+300もあったはずの☗が怪しくなってきた。
この形では金を上がって矢倉形になっているが、すぐさま銀を上がって攻めに行くと、左に成られて悪いようだ。右は飛車が効いていて駒が取れないし、飛車を取っても打ち込む隙がない。

俺は角を打たせる変化を好んで使うのだけれど、その理由として、ちょうど良い応手が大抵はあって、相手の馬作りや角打ちが疑問手になる場面が極めて多いというのがある。何より馬を作られる筋は限られていて研究しやすいため、こちらはちゃんと主張のある形にしやすい。骨子は "角を打たせること" と言っても良い。
角打たれの変化についてはめんどくさいので省略。


https://youtu.be/IAth6htn9to


水匠3改同士の検討動画。
あまりなさそうだが、矢倉にしてきた場合の変化だ。

☗+100 〜 +300 くらいのまま進行し、途中の☖78銀打が疑問手だったようだが、応手を間違え互角に。
これくらいすぐに攻めが決まるので、振り飛車だろうと決めかかって角道を閉じたり、穴熊に行ったりするのはちょっと自殺行為に見える。とはいえ矢倉に対しては、もうちょっと勝ちやすい攻めがある気はする。